フレット
帰**部
胸やけせず、飽きることなく聴ける傑作
「フレット」(M-1)だけでこのアルバムが普通の素敵にいいアルバムじゃなくて、かなり狂ったヤバいやつってわかる。(最初に断っておくと自分の言う「狂ってる」「頭おかしい」は最高の褒め言葉である)シンバルの音にこんなにこだわったアルバム、他にすぐ思いつかない。(最初に褒めるところがそこか?そこなのか!?)怪しげにビヨンビヨン鳴ってるベースに思わず吹き出したり、素っ頓狂なブルースハープに大笑いしたり、キメてくるはずの部分のギターフレーズにずっこけたり…こんなに笑い驚き、時々戸惑いながら聴いたアルバムは自分史上初である。大なり><小なりはどのジャンルに入れたらいいかわからない不思議なバンドである。「こうゆう楽曲をやろう」といって始まったバンドではなく、「やったらこうなった」のバンドだからか。(ちなみに自分が誰かにこのバンドを紹介するときは、ニューウェーブ臭のするパワーポップバンドと紹介している)聴いてるとだんだん何が普通で何がおかしいのかわからなくなる不思議な楽曲、言葉たち。正常と狂気の境界線は1mmくらいしかない。なぜゾンビの歌でこんなに盛り上がれるのか、なぜ伝書鳩の歌でこんなにばか騒ぎができるのか。興奮した頭がパンクしそうになると初のスローバラード「今際」(M-7)でまぁ落ち着けと冷水をかけられハッとする。狂い方が計算されつくしている本作はボリュームがあるのに全く胃もたれしない。なぜだろう。大なり><小なりには性欲やエロスが全く存在しない。男臭・女臭が皆無なのである。これは前作の『ミーティン』でもそうであった。そういった歌に自分はお腹いっぱいなので何度もおかわりしたくなるのかもしれない。本作の聴きどころを語れば恐ろしく長いレビューになるので、強引に2つに絞ってみると、ヨナフィ・GGPのギターバトルと「外し」まで計算されつくしてる完璧なコーラスワークを挙げたい。大なり><小なりのロック風味担当GGPの熱いギターとニューウェーブ系・ヘンテコカコイイ担当のヨナフィのプレイの聴き比べがとても楽しい。ファニーなヨナフィの声、穏やかで理性的、温かみのある山口彩子の声、透明感のあるとんがったえみコバーンの声、GGPの声は小さく入っていても山椒のようにピリリとスパイシーだ。ツインボーカルとなった「サントラ」(M-10)の存在感も頼もしい。決してシャウトしない男がシャウトする(強く歌うってくらいか?w)「ケチな呪い」(M-6)の今までにない曲調も新鮮だ。若いバンドじゃないからできることのすべてを詰め込んだ傑作だと思う。墓場まで持っていく1枚がまた増えた。
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